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「品川庄司」の品川ヒロシ(祐)監督が、自伝的小説を自らのメガホンで映画化した『ドロップ』が、旋風を巻き起こしている。
3月20日に全国約140スクリーンで公開され、31日までで観客動員66万307人、興収8億2238万円を記録。28、29日の週末は、公開週末の21、22日対比で104%(興収比較)と尻上がりの興行で、今月3日には10億円突破が確実な情勢になっている。
2週目に入ってスクリーン数は156に増えているが、限定的な劇場数でこれだけの成績を上げていることに大きな注目が集まっている。ある大手の映画会社
では、ヒット要因の分析を急いでいるほどだ。こうしたライバル他社の早い対応も、『ドロップ』のヒットが各方面に刺激を与えている証(あかし)だろう。
ヒットの要因はズバリ、人気俳優の起用と内容の面白さ、それをうまく伝達した宣伝展開だと思う。品川の原作小説は漫画化もされ、若者中心にある程度の浸
透はあったとみられるが、それだけでは映画のヒットにはつながらない。主演の成宮寛貴と水嶋ヒロ、脇に上地雄輔ら今がしゅんの俳優を起用し、若い層の関心
を大きくしたとみられる。
内容面では、ケンカのシーンとお笑いをうまく結びつけたドラマ展開が功を奏した。ケンカは水嶋、お笑いは成宮と、役柄的にもちゃんと区分けがしてあり、特にあわよくばケンカは避けたい成宮のちょっとしたドジぶりなど、実に面白く描かれていた。
「人は簡単には死なない」がモットーの水嶋が、いささか目を背けたくなるような派手なケンカを繰り広げる一方で、お笑い部分担当の成宮が漫才的な会話を
交わしていく。新人監督とは思えない、そうした硬軟織り交ぜた緩急自在の演出が、観客に面白さのだいご味として伝わっていったのだ。
ケンカのシーンでいえば、これ以上深入りすると危なくなる寸前で、仲間が必ず止めに入る。いわば、ケンカの良識が行き届いており、暴力ざんまいの映画に
はなっていないところも、製作側の配慮が感じられる。ケンカ主体の映画なのは間違いないが、そうした配慮とお笑いの要素の強力な注入によって、ケンカの
シーンに時々感じられるとっつきにくさも、かなりそぎ落とされている。このあたり、極めて今日的な作品であると言える。宣伝面では、深夜枠をはじめとする
テレビの各番組で、映画の情報が相当量露出したようだ。お笑い芸人の品川監督作というメリットが、こうしたところに大きく出ているのが強みだった。
また、テレビ局が製作に参加していない点も見逃せない。角川映画とともに、製作に入っている吉本興業にとっても、テレビ局抜きに映画事業の本格化へ向けて、頼もしい成功例ができたと言える。
現段階で見込まれる興収は15~20億円。昨年、テレビ局抜きの製作体制で、23億4000万円を記録した松山ケンイチ主演の『デトロイト・メタル・シティ』の興行を思い起こさせるが、邦画のヒット構造も、微妙に変化を遂げつつあるのかもしれない。
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